これまで「おはなしSalad」では、気候変動がもたらす海・山・畑の環境変化、それらにともなう漁業や農業など産地の声をお伝えしてきました。環境の変化をもたらす気候変動は、いちばん身近な自然である私たちの身体にも影響しています。自然環境だけでなく、社会環境の変化も著しい現代。そうした時代に必要なセルフケアについて、大好評連載「ご自愛のすすめ」の中野史朗先生にお話を伺いました。
気候変動というと、夏の顕著な暑さがもたらす影響が大きいと感じます。今年は秋口まで暑さが続き疲れが溜まったのでしょう、調子を崩す人が多かったですね。暑さだけでなく、外気温と室内の温度差がもたらす負担も大きいと考えます。私が特に気になるのは「汗」。屋外でかいた汗が冷房の効いた室内で一気に蒸発する、それを何度も繰り返すと汗が蒸発しすぎてしまい、皮膚、また肺にも負担がかかるようです。東洋医学的には皮膚と肺は免疫を司る器官なので、負担がかかると免疫系に異常をきたすとされます。そうすると夏なのに風邪をひいている人が多かったり、インフルエンザが流行ったり。また暑すぎると肋骨に負担がかかり、呼吸がしづらくなることも。ゲリラ豪雨などの気圧変化がもたらす不調もあるでしょう。気候変動には暑い寒いといった体感だけでなく、目に見えない負担が身体に蓄積されていく面があるのです。
ただ私たちの身体は変化に対応する力を持っています。有機農業では土づくりが重要といわれますよね。東洋医学も考え方は似ていて、土台の身体がしっかりしていれば気候がどうであってもしのげる、ケアすることで本来身体が持っている力を引き出して倒れない身体をつくろう、というのが基本的な指針です。
では、そのために必要な努力とは? 実は努力してはいけないんです。大事なのは「自分にとっての心地良さ」を追求していくこと。現代は身体の声を聞くことが難しい時代です。数値、意味、さまざまな情報を常に頭で判断することが求められる現代では、意識的に身体の声、心地良さに敏感になることが必要です。たとえばストレッチも心地良いと感じられる時点で心地良さを「味わう」。食べものを選ぶときも誰かの評価ではなく自分との対話を深めながら選んでいく。ただ、心地良いからといってケーキを際限なく食べるのは違います。ストレス解消になる「おいしいひと口」は大切ですが、あとで後悔しないか、中毒になっていないかどうかは行為の良し悪しを判断するひとつの指標になりますね。
「後悔しない気持ち良さ」をベースに過ごしていると、リラックスするので呼吸が深くなります。そうすると血液が末端まで届き、静脈やリンパが体幹部にしっかり戻ってきて、体液の循環が良くなる。深い呼吸は横隔膜が内臓を押し下げ、常にマッサージすることにもなるので、内臓の働きも良くなります。呼吸が安定すると、交感神経と副交感神経のバランスもとれます。
仕事や家事の途中で、呼吸が止まっていることはありませんか。そういうときは意識的にフーッと息を吐きましょう。寝る前には「アホヅラ」を意識して(笑)、顔の筋肉を意識的にゆるめるといいですよ。ヨガでも坐禅でも呼吸が大事だといいますよね。どんな時代であっても特殊な何かがあるわけではなく、基本的なことが最も大事なことなんです。
中野史朗(なかの・しろう)
均整師・整体師。東京・品川区の治療院「開音堂」で多くの患者さんと向き合う。均整術、鍼灸のほかオステオパシーの研究や通訳・翻訳も手がける。幼児期からの重度のアトピーを東洋医学で克服した。著書に『からだをほぐす こころをゆるめる』(説話社刊)。
開音堂通信 http://canore87.exblog.jp
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目の使いすぎに気をつけて、通勤時間はスマホを見ないなど、ぼおっとする時間をつくりましょう。目の疲れには温めることが効果的です。寝る前にホットアイピローなどで温めましょう。
肩こりの原因は千差万別で一概にいえません。ストレスによる緊張もあれば、内臓の不調と関係することも。それらを理解したうえで、動かすことが大切です。歩く時間がない時は足を肩幅に開いて両手を同時に前後に振り動かす「スワイショウ」がおすすめ。鎖骨が柔軟になるとリンパの循環が良くなります。
こちらに関しても大切なのは「動くこと」。ラジオ体操を5分間やるだけでも違ってきますよ。
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会員さんのヘルスケア法
身体の中にも四季はめぐるもの。季節によって負担のかかるところも変わってきます。季節ごとのケアとおすすめの食材を教えていただきました。
寒さに身をかたくしていた冬が過ぎ、溜めていたものを排出しようとする季節と考えます。春になると湿疹が出たり、花粉症もひとつの排出という説もあります。そこでよく働く臓器は肝臓です。肝臓は解毒の器官。春は身体の排毒を助けることを意識しましょう。身体を動かすことは年中大切ですが、春は特に意識してみてください。また筍や山菜など苦みのあるものは排出を促進してくれるといわれています。ぜひ旬を楽しんで味わいましょう。
ストレッチ、散歩、何でもいいので身体を動かしましょう。窓を開け放って思い切り掃除するのも気持ちが良いものです。春を見つけながら散歩をして、ヨモギなどの山菜や草花を摘むのも楽しいですね。
湿度が高くなると胃腸の働きが落ちると考えます。夏に食中毒になりやすいのはバイ菌が増えるだけでなく消化器の働きが落ちるせいもあるようです。盛夏は屋外と室内の気温差も負担に。夏でもできるだけお風呂に入り、時にはじっくり汗をかきましょう。食材は消化と疲労回復を助けるとされる梅干し、食欲の沸く薬味野菜、熱を逃がしてくれる夏野菜など季節のものを食べて。夏は開放的な気持ちから人との交流が盛んになる季節。熱中症に気をつけながら、花火やお祭りなど夏の風物詩も楽しみたいですね。
夏の間は1日に一度は思い切り汗をかきましょう。入浴後、すぐに冷房の効いた部屋に移動するのではなく、つらくない程度の自然な温度の部屋で、タオル片手に汗が自然とおさまるまで過ごしてみてください。
気温が下がり空気が乾燥してきて、肺や気管といった呼吸器に負担がかかる季節と考えます。風邪をひいて気管が苦しいとき、加湿すると心地良いですよね。秋はうるおいを意識して過ごしましょう。おすすめは入浴時のスチーム浴です。また、うるおうとされる食べ物には梨があります。秋も後半になると栗やさつまいもなどこっくりしたもの、サンマなど脂ののったものが出回ってきます。これは冬に向けて脂肪を蓄えていくのに適しています。旬のものは不思議とその時の身体が必要とするもの。うまくできていますね。
お風呂にタオルを浸して絞って、顔に当ててスチーム浴を。併せてアロマオイルを使うのもいいですね。香りは自分にしっくりくるものを選びましょう。身体の変化とともに心地良い香りも変わるので、違和感を感じたら変えてください。
冷えるとトイレに行きたくなりますよね。冬は腎臓や膀胱といった泌尿器に負担がかかると考えます。また寒さに師走の忙しさが加わり、風邪をひきやすい季節でもあります。冬はとにかく身体を温めることが大切です。おすすめは足湯。風邪の治りが良くなったり、お子さんの中耳炎の痛みが緩和するといったこともあります。食べ物は根菜など、身体が温まるとされるものを食べましょう。冷えは血のめぐりを悪くして内臓の働きを弱める万病のもとです。冷やさないことを意識して過ごしましょう。
なんとなく風邪をひきそうな時もぜひ足湯をしてみてください。食材は土の中で育つ根菜を。根菜類にビタミンB1を含む豚肉を加えた豚汁は冬にぴったりのメニューです。
ご紹介の内容はひとつの参考としていただき、体調と向き合い、治療については主治医の先生と話し合いながらすすめてください。
ご自愛とは、身体の声に耳を澄ませ、心地良さを深めていくことなんですね。四季のめぐりのなかで、自然の一部である私たちの身体もまためぐっています。あたりまえの日常の豊かさに気づいてよろこび、味わい、慈しむ。らでぃっしゅぼーやは「良いめぐり」の実感を通じて、日々が心地良くなるサービスを皆様にお届けしたいと思っています。
じんわりお湯に包まれてふうっと息つく大事な時間。お湯にしっかりつかった日とそうでない日は翌朝の疲れが違う気がします。入浴剤やアロマオイルなどお気に入りのものがあるとお風呂時間はいっそう充実するもの。身体の声に耳を澄ませながら心地良さがめぐるバスグッズを探してみてください。
自宅で“重炭酸湯”が楽しめる入浴剤。ドイツで自然療養に利用されてきた自然炭酸泉の研究から開発されました。一般的な炭酸ガス入浴剤は炭酸ガスがすぐに外へ逃げてしまいますが、重炭酸湯は炭酸ガスがイオンに変化することで高濃度でお湯の中にとどまります。温浴効果が高まることで身体がしっかり温まり、血行を促進してくれます。
食べ物は自分の身体をつくるもの。食材選びに始まる料理はいちばんのセルフケアとも考えられます。丁寧につくられた力ある食材のおいしさをより実感させてくれるのがお味噌汁です。疲れた時、献立に困った時も、たくさん野菜を入れてお味噌汁をつくれば大丈夫。季節の野菜でつくることで旬の味ができあがります。同じ料理だけどいつも違う無二のおいしさをじっくり味わってみてください。
畑から旬をお届けする、らでぃっしゅぼーや創業以来の看板商品。環境保全型の農法だけでなく契約栽培という生産者の経営的な持続可能性にも寄与する仕組みを構築しています。
白色醤油麹菌を使用し、約1年間熟成させた天然醸造の手造り味噌。良い調味料があれば料理はシンプルで十分と実感できるおいしさです。
米ぬかを発酵させてつくる、うま味調味料無添加の浅漬けの素。浅漬けなら約10分、2時間ほど置けばぬか床で漬けたような本格的な漬け物ができあがります。