東洋医学の基本は、日々の「ご自愛」です。
心がけから始める健やかな身体とこころの整え方を
均整師の中野史朗さんがやさしくガイドします。
よくあることなのですが、「いやぁ、ひさしぶりにやっちゃって…」と、ギックリ腰の方が来院。そういえばと思いカルテを見返すと、昨年も同じ時期にギックリ腰になって私の施術所にいらしています。そのことをお話すると、「確かに、この季節よくやります」と。
みなさんも、体調がいまひとつの季節はありませんか? 身体を自然界のひとつと考える東洋医学は、自然界と同じように身体にも四季はめぐると考えます。
春、緑が芽吹き始めると同時に身体も活発になり始めます。このとき一番働くのが肝臓。冬の間溜め込んだいろいろなものを排泄して身軽になり、動きやすくなろうとします。ですが、花粉症や急な腰痛、イライラや落ち込みを経験する方は少なくありません。これは肝臓が上手く働けていない、と東洋医学では考えます。
そして、だんだん気温が上がり日本では湿度も高くなる梅雨から夏。この間は消化器に負担がかかると考えます。食中毒に注意したい季節ですが、湿気で細菌が繁殖しやすいのに加え、消化器の力が少し落ちていることもあります。食欲不振になったり、身体が重だるい、やる気が出ないなんていう訴えも多いものです。
気温が下がり空気が乾燥してくる秋、急に咳が出たり喉や鼻の不調に悩まされることはありませんか? 気分的には急に物悲しくなることも。この季節は肺や気管といった呼吸器に負担がかかりやすい季節と考えます。
冬になると空気だけでなく、大地まで冷えてきます。日本では特に年末にかけて忙しくなるため、疲労が重なり風邪を引いて高熱が出た後なかなか治らず長引いたり、ひどいギックリ腰や寝違いで辛い思いをする方が多く来院します。この時期は、腎臓や膀胱といった泌尿器に負担がかかると考えます。
人間、やはり弱い所はあります。内臓も同じです。不調になりやすい季節はその弱い臓器を教えてくれていることになりますし、東洋医学ではそれをヒントに実際の治療を組み立てます。そして、そのヒントをもとに、不調の季節の前から養生し内臓に負担をかけないようにします。
その養生法がこの「ご自愛のすすめ」でご紹介するあれこれです。どうか今までのご自愛法を活用して、少しでも気持ちのよい1年をお過ごしください。
足のツボ、行間(こうかん)と太衝(たいしょう)の間を指圧します
ご紹介の内容はひとつの参考としていただき、体調と向き合い、
治療については主治医の先生と話し合いながらすすめてください。
中野史朗(なかの・しろう) 均整師・整体師。東京・品川区の治療院「開音堂」で多くの患者さんと向き合う。均整術、鍼灸のほかオステオパシーの研究や通訳・翻訳も手がける。幼児期からの重度のアトピーを東洋医学で克服した。著書に『からだをほぐす こころをゆるめる』(説話社刊)。