野菜不足が深刻です
~ゴールに辿りつかない走者、つながらないバトン~
秋分の日を過ぎ、東京は、ようやく澄んだ秋の空気になりました。厳しかった夏はひと段落ですが、畑には確実に酷暑のダメージが残っており、野菜不足は続きそうです。
10月は夏野菜が終盤になり、秋冬野菜が出てくる前で、野菜の少なくなる「端境期」です。夏を彩ってきたトマトやなすが終わりを迎え、秋の根菜類の収穫はこれからピークを迎えます。また、産地リレーの谷間でもあります。夏の食卓を支えていた涼しい北海道や高原産地が終盤を迎え、本州平野部の産地に切り替わっていきます。夏から秋冬への畑のバトンがうまく渡るかどうかが、秋の食卓に影響しますが、今年は思うようにいっていません。
夏野菜のダメージは深刻です。トマトなどの果菜類は、6月から10月まで継続的に実をならせる、いわば長距離ランナー。今年は8月頃まで好天に恵まれたくさん実をつけて順調でしたが、実がつきすぎるとトマトの木に「着果負担」がかかります。疲れてしまい、その後の生育が落ち込みます。マラソンランナーが、途中で急にペースを上げ過ぎると息切れするかのよう。また、暑すぎて花を落とす症状も多く出ており、花が落ちると当然実はつきません。一方、収穫適期が短い短距離走者はとうもろこし。例年は種まきから80~90日で収穫を迎え9月後半まで収穫しますが、暑さで生育がぐんぐん前進し、70日ほどで収穫を迎えた地域もあります。生産者もギリギリ未熟にならない範囲で、一瞬の収穫適期を逃さないように例年より早く収穫に入りましたが、それでも結果的には遅く、「実がしなびていた」というお客様からのご連絡を多く頂いてしまいました。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
粒がへこんでしまう、とうもろこしのしなび
特に厳しいのが北海道。もともと、夏の北海道で作られている人参、ブロッコリー、大根などは、暑さが苦手な野菜たちで、夏は涼を求めて北へと逃れてくるのに、8月末に35℃の暑さが続き、ひとたまりもありません。広大な畑に植えたものの、高温で生育が止まり収穫をあきらめた野菜も多数。ブロッコリーを作るベジタブルワークスの佐々木さんは「農業をやってきた中で、昨年が一番ひどいと思ったけど、今年はそれを上回る厳しさ。」と話します。暑さが落ち着くこの時期に復活を見込んでいましたが、苗段階での高温で病気が蔓延しており、これ以上農薬は使えず厳しい状況。「こんな状況だと、農薬を控えた栽培は手間がかかってリスクが大きく、考え直さなくちゃいけない」。多くの生産者が作り方や経営を見直す分岐点になりそうな、厳しい年となっています。