渡り鳥と育む、田んぼのお米
~蕪栗米生産組合(宮城県)~
渡り鳥の生息地で育つお米
稲刈りも終盤に近づく10月中旬、今期の米の作柄(生育状況や出来ばえ)を確認するため、つや姫やササニシキの産地、宮城県大崎市の蕪栗米(かぶくりまい)生産組合を訪問しました。今回は会長の千葉さんが、渡り鳥のマガンを見るため、蕪栗沼に連れて行ってくれました!
「朝5:30に迎えにくるわ」とマガンを見に連れて行ってくれた、会長の千葉さん
一斉に飛び立つマガンの姿は圧巻
蕪栗沼と周辺の水田は、2005年に「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」に基づく「ラムサール条約湿地」に登録されています。稲刈りのこの時期、北方のシベリアから越冬するためにマガンが飛来してきます。
奥に見える黒い点は、すべてマガン!
夜は蕪栗沼で休息し、日が昇る直前になると、稲刈り後の田んぼに落ちた籾を求めて一斉に飛び立ちます。万を超える数のマガンが飛び立つ様は空を覆い尽くすほど圧巻で、大崎市の風物詩です。
一斉に飛び立つ瞬間はもちろん、大きな鳴き声も迫力
今回は残念ながら一足遅くピークは逃したものの、数千羽が飛び立つ様子はすごい!のひとこでした。
なぜ、数千という数が分かったかというと、蕪栗沼の保全や管理をしているNPO法人「蕪栗ぬまっこくらぶ」の方がちょうどモニタリング調査をしており、少しお話をきくことができたからです。三脚に立てた望遠鏡をのぞきながら、左手に持ったカウンターのボタンをカチャカチャと押して水鳥の種類と数を確認していました。
NPO「蕪栗ぬまっこくらぶ」の方の望遠鏡から覗かせてもらったマガンたち
米の生育は概ね順調です
今年の米の生育状況は、収穫量も出来も厳しかった昨年と比べると、今のところよさそうとのこと。去年より気温は高かったものの、雨がほどほどに降り救われたそうです。
一方で、刈り取り直前の台風で稲が倒伏している田んぼも多く、更に雨が続きなかなか刈り取りに入れない状況も続いています。
一部、倒伏してしまっている稲も
倒伏したところにマガンが食べにきてしまうので、「米の収量が心配だね」と会長の千葉さんではなく、モニタリング調査をしている方が話していたのが新鮮で、地域全体で蕪栗沼を見守っているのを感じました。
田んぼを守ること=生態系を守ること
干拓などによって日本の湿地面積はこの100年ほどで6割が消失しているそうです(※1)
。マガンにとって、見晴らしがよくて浅い、安全な寝床となる沼と、餌を得られる広い田んぼがセットになっている蕪栗沼は大変貴重な場所です。
そんな水田を含む湿地を維持することは、マガンだけではなく、田んぼの害虫を食べてくれる鳥など様々な生き物の生態系を守ることに繋がります。
2017年には国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する世界農業遺産となった大崎耕土
マガンが羽ばたいていく姿を見て、
※1)日本全国の湿地面積変化の調査結果(国土交通省国土地理院)(2024年10月25日に利用)
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