届けられなかった「尾島ねぎ」
固定種を守り続ける難しさ
利根川みどりの会 定方さん(群馬県)
今回は野菜の「固定種」についてのお話です。
固定種とは、ほかの種類とかけあわせることなく、育てた野菜から種を取り、またその種を育て…と繰り返され、個性が安定(固定)し何代も続いてきた野菜のことです。固定種のなかでも特定の地域の風土にあわせて適応していったものを「在来種」といういい方もします。固定種は、自家採種により何度でも種がまけます。
一方で、種苗会社が異なる種類をかけあわせて生まれた一代限りの交配種を「F1種」といいます(F1種は一代限りなので、毎回種を購入する必要があります)。かけあわせる野菜のそれぞれのいいとこ取りが可能で、現在流通している野菜のほとんどはF1種です。
例えばやわらかく甘みがあり鍋に最適な「なべちゃんねぎ」は、味が濃くておいしい「下仁田ねぎ」と、耐病性を備えた「根深一本ねぎ」のいいとこ取りで生まれたF1種です(根深1本ねぎもF1種です)。
いいとこ取りで生まれた「なべちゃんねぎ」
そのように耐病性や収穫性も考慮され育てやすく改良されたF1種に比べ、形や大きさ、成長にバラつきがあるなど不安定な在来種は、より栽培技術が必要となります。
らでぃっしゅぼーやでは在来種やその技術を存続させるため、規模は小さくても積極的に販売し、認知を広げる活動を行ってきました。在来種の野菜を栽培し続けてくれている生産者のひとりが、利根川みどりの会の定方さんです。
定方さん(左)と後継者の息子さん(右)とお孫さん。2023年7月「未来を担う後継者」では息子さんについても紹介しています
定方さんはらでぃっしゅぼーやと長いお付き合いのベテラン生産者。お客様においしく食べてもらうため、出荷する全ての野菜に手作業でリーフレットを同梱しています。
ひとつひとつ手作業で「いと愛づらし」野菜のリーフレットを入れて袋詰め
しかしながら、定方さんも今、気候変動という新たな問題に直面しています。定方さんは特に長ねぎの栽培を得意としていて、「赤ねぎ」「潮止晩ねぎ」など多くの固定種も栽培しています。「尾島ねぎ」もそのひとつですが、今シーズンは猛暑の影響を受け出荷ができなくなってしまいました。
群馬県尾島地域の固定種(在来種)「尾島ねぎ」
尾島ねぎは群馬県の尾島地域で古くから栽培され、その味のよさからかつては深谷ねぎと並ぶブランド品でした。風で倒れやすく収量が悪いのですが、地元の名を冠したねぎを守るために、この味を息子たちにも伝えていきたいと、定方さんは種を守り続けていました。
そして先日「栽培し続けたいけど、この気候じゃ栽培できない。この土地では栽培できない」と切実な想いを話してくださいました。続けたい気持ちはありながら、手をかけても報われない可能性が高いという現実に直面しています。
夏が過ぎ冬になっても酷暑の影響は大きく、ねぎ、いちご、きのこなどもお客様にお届けできなくなった商品があります。
定方さんの固定種のごぼう。通常80cmほどに育つが、酷暑影響で30cm長さにしか育たず
定方さんの長ねぎ。酷暑影響で軟白部分が短い
今後も変わらずお届けしていくにはどのような対策が必要か、生産者と協力して考えていかなければならないと強く感じます。
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