背丈を超えて伸びるアスパラ!
先人の知恵が光る、北海道の春
東京は汗ばむ陽気で蚊も飛び始めた5月半ば。北海道では、残雪をたたえた山並み、ひんやりと頬をさす冷たい風、萌黄色の新緑の美しいグラデーションが春を感じさせます。
かつて、先輩からは「5月の北海道には行くな」と教えられました。ただでさえ雪で遅れをとる時期に植え付けの手を止められると生産者にとっては甚だ迷惑で、スタートの遅れは、収穫までの後工程すべてに響きます。そうならないよう、この時期は立ち寄る生産者を選びます。
冬から春にかけて、北海道の食卓からは地場の青もの野菜はほぼ消え、道産の春野菜の登場が今か今かと待ち望まれます。その代表格がアスパラです。
本州の方は、「アスパラって春の野菜なの?」と思われるかもしれません。最近は一年中販売されているので季節感を感じづらいですが、たけのこ同様に地下茎でつながっており、この時期、ニョキっと地上に顔を出した新芽を収穫します。
原崎農園、原崎さんのハウスでも、新芽がニョキニョキ
春の新芽の収穫は約30日続きます。株の力が徐々に衰え発生が減ってくると収穫終了ですが、生産者は太い芽を残して、そのまま育てます。すると、たけのこが竹になるようにアスパラはグングン育ち、穂先の部分は開いて枝葉になり、やがて背丈を超すくらいの高さの「木」になります。これを「立茎(りっけい)」と呼びます。
こんなに伸びる!アスパラの立茎
「芽」が「木」になる間は一旦収穫をやめ、ある程度の高さまで伸びた後、再び出てくる夏芽をそこから2〜3か月ほど収穫することができます。ハウスで立茎栽培を行うと、北海道では、約1か月の立茎による中断期間をはさみ、4月〜8月頃まで収穫が続くことになります。
アスパラは地下でこうなっている!
本州のアスパラ生産者は、ハウス内で長期採りするスタイルが多いですが、北海道では、露地の畑で春芽のみを収穫する「露地一季採り」というスタイルの方が一定数存在します。長い間収穫を続けるより、早めに収穫を切り上げた方が翌年もいいものが出ると言われ、冬の間しっかり休んで、十分に栄養を蓄えた元気のいい春芽のみを収穫。これが抜群においしく、旬を感じさせます。
のんの畑北海道、川端さんの露地アスパラ。不耕起で栽培しているから草だらけで収穫は大変とのこと
もう一つ紹介したい北海道の春野菜が「越冬春ねぎ」。春に種を播き、生長した長ねぎを秋に収穫せず、そのまま畑に放置。雪に覆われて地上部がすべて枯れます。3月末に雪が融け、残った根と株から新芽が伸びだし、あっという間に5月前半には長ねぎの姿になります。
越冬春ねぎの生産者、北海道有機農業協同組合の池田さん
甘みとやわらかさが特長です
これが越冬春ねぎで、軟白部は短いですが、出始めは特に甘みがあってやわらかくおいしいです。2週間くらいたつとあっという間にねぎ坊主がつき、少し硬くなります。
通常はねぎ坊主がついてしまうと硬くなって商品価値がなくなりますが、越冬春ねぎは、もともとが柔らかいだけあって、ねぎ坊主部分を取りながら5月末までお届けします。
この、一度雪で枯らす作り方は一部の在来品種のねぎでしかできません。また、長ねぎは栽培期間が長く、農薬使用が多くなりがちな野菜ですが、この栽培法だと、前年の病虫害はある程度雪でリセットされ、農薬を使わない栽培と相性が良いです。
北海道アンの会の林さんの露地畑で見つけたのは、咲き乱れる菜の花。
北海道アンの会、林さんの小松菜畑
咲き乱れる菜花の正体は…?
北海道で菜の花が咲き乱れるには早くないかな?と思ったら、前年秋に播いた小松菜を越冬させ、雪解け後に伸びた葉と花芽を菜花として育てていた、そのなれの果てでした。小松菜の菜花も柔らかくてほのかな苦味があり、おいしいです。
正解は小松菜菜花!
春の気候任せになるので、いつ収穫できるか予測がつきませんが、そういうものこそ、おまかせでお届けするスタイルのめぐる野菜箱にぴったり。来年は青ものが貴重なこの時期に、北海道のお客様にお届けできればと思います。
5月の北海道は、道産の野菜がほとんどなくなる端境期ですが、雪の中でも食をつないできた先人の知恵と工夫を感じ、北海道の春野菜の奥深さを感じました。
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