らでぃっしゅぼーや

今週の畑だより

らでぃっしゅぼーや農産担当による
畑の"今"を届ける産地密着コラム

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今まで以上に、見た目よりも中身を重視
~果物の外観基準緩和~

夏から秋冬のフルーツへ
朝晩の風が涼しくなり、秋の虫たちの鳴き声もいっそう盛んになってきました。残暑もひと段落、秋の果物も実りの時を迎えています。

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柿のお届けも始まりました

桃、ぶどう、和梨などの夏の果物は、台風被害も免れて比較的順調のままシーズン終盤を迎えました。りんご、柿、柑橘などの秋冬の果物にバトンタッチしていくわけですが、西日本中心のみかんや柿は、極度の干ばつと豪雨、カメムシ害など、今年も苦戦が予想されます。

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カメムシ、ダニ…果樹栽培は虫との戦い

長野・青森のりんごは、不作続きの近年に比べると今のところ順調なところが多いですが、メインの「ふじ」は不作が確定しています。春の段階で花が実を結ばずに落ちてしまう「カラマツ」と呼ばれる受精不良が多発しており、実自体が少ない状況です。

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やがて実となるりんごの花ですが、受精がうまくいかず実にならない「カラマツ」被害が増えています

救世主となるか、「交信かく乱剤」
青森のりんご畑で今年キーワードになっていたのは「交信かく乱剤」です。人工的に合成された害虫向けの性フェロモンを畑に充満させることで、オスはメスのフェロモンが分からなくなります。メスにたどり着けず交尾ができないため、次世代の虫を減らすことができるというもの。

近年の暑さで、シンクイムシなどの虫は大きな悩みの種です。その名の通り、果実の中に入って食い荒らします。

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シンクイムシが侵入した痕(侵入痕)

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シンクイムシが出てきた痕(脱出痕)。中は食い荒らされてしまっています。

虫たちも進化し、対策は難しくなっています
桃や和梨の産地・福島では、シンクイムシは年に4回世代交代するといわれその対策に取り組んできましたが、近年は高温化により5~6回世代交代するようになっています。

例えば「例年7月下旬に第2世代が羽化するから、そこで農薬を散布しよう」と計画をたてても、世代交代の回転率が早まるとタイミングが合わず、被害が避けられません。

交信かく乱剤は、序盤から虫の個体数を抑えて推移させることで、化学合成された農薬に頼らずに秋まで被害を軽減できる、環境にやさしい農薬として期待されています。

産地ごとに異なる、取り組みの状況
長野のりんご産地・アップルファームさみずは生産者全員で取り組み、農薬を減らす果樹生産には欠かせない手段のひとつとして活用しています。

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長野県、アップルファームさみずのみなさん

福島の和梨産地・うもれ木の会でも散布するためのコンフューザーは当たり前。この地域では慣行農家も含め全農家がつけており、使わないと地域の農協にも出荷できないほどだそう。

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和梨生産者、うもれ木の会の遠藤さん

とはいえ。足並みが揃わない地域で導入するのは勇気がいります。青森・新農業研究会の佐藤さんは、3年前から交信かく乱剤を入れていますが、地域の農家の大半は様子見で導入していません。

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青森県、新農業研究会の佐藤さん

青森県では、今年から交信かく乱剤に補助をつけ、導入を推進しています。その背景には、果樹の農薬の厳格化があります。農薬を散布する生産者自身への健康影響をを考慮し、安全性基準が高まったこともあり、来年度から果樹では使えなくなる農薬が増えます。

主要な農薬で使えなくなるものも多く、生産者にとっては、虫や病気は年々手ごわくなっている中で、対処法を失うことにもなり頭を悩ませています。

より一層、見た目よりも中身を重視して
このように生産環境が年々厳しくなってきていることもふまえ、らでぃっしゅぼーやでは今後、りんごなど果物の外観に関しては、規格をゆるめてお届けしてまいります。

見た目は少し悪くても皮を剥けば中身には問題ない」「ごく一部分を取り除けば食べられる」「というようなものは、正規品としてお届けする場合があります。

~今後正規品としてお届けする可能性があるりんご~※程度によってはこれまで通りふぞろい規格外品として扱います※

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凍霜害で皮がサビのような模様になってしまうもの

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色づきにバラつきがあるりんご

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ぐんま名月の赤い斑点。味には影響ありません

らでぃっしゅぼーやの果物産地は、もともと外観よりも味重視。化成肥料や反射シートを使い、大きく真っ赤な見栄えのよいりんごを作るのではなく、有機質肥料で、見てくれや色づきは悪くても手間をかけ、おいしいりんごづくりを目指してきました。

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らでぃっしゅぼーやでも販売している「葉とらずふじ」。葉の部分は色づかずまだらになりますが、甘くおいしいりんごです。

近年、高温による色づきの悪化、霜によるサビ、病気による斑点、台風や突風による擦れなど、気候の変化により、外観のみならず、そもそも栽培自体を難しくする要因が増えています。

外観は悪くても、中身重視でおいしいりんごを作ることを志している人たちと取り組んでいるからこそ、外観に関しては譲歩し生産者が栽培・出荷を続けていける環境を模索していきたいと思っています。

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随時情報発信していきますので、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

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各産地と出荷基準の認識あわせをする「目ぞろえ会」の様子。品質・味には問題のないラインを見極めて、お届けして参ります。

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