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東京ではまだ残暑厳しい9月下旬、薄い生地のパンツで向かった北海道は、後悔からのスタートでした。お盆以降は30℃を超えないとされていた北海道で、今年は35℃超が続き、夏場の野菜が不足している真っ只中でした。旭川空港を降りた瞬間、本来の北海道が私を歓迎してくれたようで、ひんやりと肌に触れる北海道の空気で「この装いは間違っている」と気づきました。今回の訪問の目的は、北海道米の視察です。
ここ数日で暑さがようやく和らいだとのことでしたが、エアコンがないと眠れなかったというほど、北海道では考えられない夏だったそうです。田んぼでも同様に考えられない光景が。強風により稲が倒伏し、地面に這った状態で穂から発芽するという現象が起こりました。例年の北海道では倒れてしまったらそれまでなのですが、35℃の発芽適温を迎えたことによって発芽したとのこと。「北海道で見たのは初めてだ」と、訪問する生産者たちが口を揃えました。
ファーマーズ・クラブ雪月花の市川さん
高温の影響により収穫量は1割ほど減少。そこまで影響ないように聞こえるかもしれませんが、北海道の生産量規模は本州と1桁違うので、影響は甚大です。前代未聞の高温でも、新潟県と比べれば被害が小さいのは、北海道は水資源が豊富だからと生産者はいいます。水道がなく地下水で生活できる地域もあるそうで、農業大国の底力を感じた夏だったともいいます。
毎年何気なく食べている米ですが、背景にはその年その年の様々な生産者の苦労があります。当たり前に食べている米は、当たり前でない状況下で栽培に取り組む生産者によって支えられてきた、思い込みの当たり前だったのだと、感じさせられました。
新米シーズンが始まります。今年も感謝しながら、新米をいただきたいと思います。