梨、りんご…果物栽培への強い逆風
遅れてきた過ごしやすい秋は足早に通り過ぎ、あっという間に風が冷たくなりました。そんな折「今年限りで出荷をやめます。」というメールが届きました。送り主は福岡の平田果樹園の平田さん。長い間、らでぃっしゅぼーやでお届けする和梨をつくっていただいていました。
平田果樹園の平田さん
近年、果樹は逆風が吹き荒れています。春の霜害、病気、虫、干ばつ、日焼け、豪雨、雹、強風、鳥害…。和梨に立ちはだかる障害は多く、生産量が減っている果物のひとつです。お父さんの代からのお付き合いで、後継ぎの平田さんは農家としてはまだまだ若い部類。ただご両親は高齢になり体調を崩すこともあり、一緒に畑に出られないことが多くなってきました。昨今の高温も手伝い梨の生育は進み待ってくれず、これまで以上に人手をかける必要があるものの、人手が足りず作業が追いつかなくなっていきました。
袋がけが間に合わず、割れてしまった梨(平田果樹園)
平田さんの畑で悩まされている黒星病(平田果樹園)
平田さんは、もともと1つ1つの梨に丁寧に袋がけをすることで農薬を減らす栽培をしていましたが、袋がけ作業はかなり手間がかかり、やりきれなくなっています。以前より相談を受け、何とか作り続けてもらえる道を一緒に模索していましたが、平田さんは変わりゆく気候、減る人手を考えると、手間をかけて、品質のよいものを計画的に生産することに限界を感じ、今回の判断に至りました。
今年はりんごも厳しい状況です。2大産地の長野県と青森県が、どちらも干ばつの影響で小玉傾向で不作。そしてりんごがこの夏悩まされたのが「日焼け」です。
日焼けしてしまったりんご(新農業研究会)
りんごは、日光にあたることで赤く色づくための色素がつくられます。そのためりんごの実が葉の影に隠れないよう、葉を適度に摘んで日当たりをよくします。ところが今年の夏の日射しはりんごには強すぎ、日に当たった部分が高温にさらされて変色し傷んでいく「日焼け果」が多発しました。生産者も、日焼けをさけるべく、早生の品種は「葉を摘まない」という選択をしたため、今年は「赤くないりんご」をよく見かけたのではないかと思います。
日焼け果の例(NSニッセイ・アップルファームさみず)
赤く色づくためのもうひとつの条件は「気温の低下」ですが、こちらも秋まで高温が続き、なかなかりんごは色づきません。赤くなってからとりたいのが生産者心理ですが、皮肉にも赤くならないのに成熟は例年以上に早く進みます。その結果10月に作業が追いつかなくなり、収穫する前に成熟した実が落ちてしまう「生理落果」が多発しました。
落果したりんご(新農業研究会)
また今年は実もやわらかめです。ちょうどお届けがはじまった「ふじ」は、貯蔵して4月末までお届けします。このように貯蔵するものは春までの日持ちを考慮し、完熟を待たずあえてやや硬めで、早めに収穫します。ところが、今年はやわらかく成熟が進んでいるため、貯蔵に適した品質のものがありません。追い打ちをかけるように10月以降、青森では鳥の被害が深刻。畑で爆音を鳴らすなどの従来からの鳥対策ではなすすべなく、残った実がみなつつかれてしまい、生食用として出せるものが激減。
鳥による被害(まさひろ林檎園)
さらに10月と11月に風速20mを超える強風が吹き、ここでも多くのりんごが落果したり、傷がついたりしました。
強風で樹が倒れ多くのりんごが落果(まさひろ林檎園)
収穫できるりんごが少ない中、円安で輸出は活況のため市況は高騰。厳しい状況下で生産者も背に腹は代えられません。「貯蔵して高い電気代をかけた結果傷んでしまうくらいなら、貯蔵をあきらめ、高いうちに売る」という選択をする方もいます。
そんなこんなで、果樹にとっては、暑すぎた夏の代償で寒さが身に染みる厳しい冬になりそうです。
※今シーズンお届けするりんごについて※
このような状況もあり、今年はやや小玉だったり、傷がついていたり色づきがよくなかったりするものもお届けしております。味・品質などお召し上がりいただくうえで影響のない範囲を生産者と協議し基準を設けて出荷しています。万が一、中身が腐っているなど食べられないようなものをお届けしてしまいましたら、お手数ですがお客様サポートセンターまでご連絡くださいませ。
アップルファームさみずとの「目揃え会」(今年の出荷基準を確認する会)
和梨生産者の平田さんや、りんご生産者へのメッセージをお寄せください。
平田果樹園とらでぃっしゅぼーやは2世代に渡り、20年以上のお付き合い。幸水、豊水、にっこり、王秋などの和梨を、らでぃっしゅぼーやの基準で農薬を控えて出荷していただきました。