祝!コウノトリの赤ちゃん誕生
~有機の田んぼが育む生物多様性~
金沢大地(石川県)
能登半島の地震から数日後の五月中頃、石川県で米などの有機穀物や加工品を手がける金沢大地を訪ねました。大きな被害はなかったようで一安心。昨年の畑だよりではコウノトリが金沢大地の田んぼに飛来したことをご紹介しました。今年はコウノトリの赤ちゃんが誕生!石川県としては、昨年の能登地方に続き2年連続での吉報となりました。
コウノトリのために金沢大地の有機米の田んぼに建てられた人工巣塔の上では、2羽のヒナが大きな口を開けて親鳥からエサをもらっていました。田んぼでは、ピィピィ、チチチ、ゲッゲッ、ジージー・・・鳥やカエルや虫たちの声が沸き立つように聞こえてきます。これだけ沢山の生き物がいれば、きっと食べ物に困ることはないでしょう。
農業経営だけでなく、農林水産省・環境省の委員としても活動している金沢大地の代表・井村辰二郎さん。幼少期は川で魚を獲り、虫と遊ぶのが大好きな少年だったそう。ところが高度経済成長とともに化学農薬や河川工事の影響で身近な生態系が崩れていくのを目のあたりにしてきました。脱サラして農業を継ぐ際、決意したことのひとつが「有機にすべて切り替える」こと。国産の有機穀物がほとんど流通していなかった時代の大転換でした。それから20年以上の時を経て、豊かな生態系の象徴でもあるコウノトリが田んぼに戻ってきてくれたことが、とても嬉しかったと話します。生き物が姿を消していった少年時代のさみしさや悔しさを、大人になった井村さんが挽回したのです。
昨年カナダで開催されたCOP15では、2030年までに生物多様性保全エリアを国土の30%以上にする、通称「30by30/サーティバイサーティ」という新たな国際目標が定められました。ここでは「保全エリア=人の手が介在しない野生」と定義され、農地や里山は含まれませんが、アジアの気候や植生・生態系においては有機の圃場や里山のほうが多様な生物が存在するケースもあり、井村さんはアジア型の生物多様性のあり方についても、関係省庁と連携しながら模索しています。
「コウノトリの赤ちゃんを育てているのは、有機の農産物を食べて支えてきてくれた、お客様たちです。本当にありがとうと伝えてほしい」と井村さん。一食一食の「食べること」はささやかであっても、多くの人が細く長く続けることで、めぐりめぐって良い変化を起こす。コウノトリの親子の姿に、一朝一夕では叶えられない大きな循環を感じました。
コウノトリの赤ちゃんをライブカメラで配信中!
「コウノトリの親子を是非皆さんにも見ていただきたい」と、金沢大地の井村さんがコウノトリ親子達のストレスにならない距離でカメラを設置!その様子をインターネット中継されています。是非親子の様子をご覧ください♪
コウノトリが金沢に滞在するのは7月上旬頃までの見込みだそうで、今の時期しか見られない貴重な姿です。LIVE配信はこちら!
コウノトリ
特別天然記念物・国内希少野生動植物に指定されています。国内の野生コウノトリは、農薬の影響や水田の減少による餌不足などを理由に1971年に絶滅しました。人工飼育による増殖が行われ、現在300羽を超えるコウノトリが日本に飛来しているといわれます。