脅威にも、救世主にも
~台風と農業~
関東直撃を免れた台風7号
8月16日、非常に強い勢力で関東直撃か!?と警戒された台風7号。進路がやや東寄りにずれ、直撃しなかったのは不幸中の幸いでした。千葉県などで停電等の影響はありましたが、大きな被害はなかったという報道に安心しました。
台風が上陸していたら…
もし東京湾に台風の中心が進んでいたら、2019年に千葉県に壊滅的な被害をもたらした「令和元年房総半島台風」並みの甚大な被害を受ける可能性があり、千葉県をはじめとする関東の生産者は戦々恐々としていました。
当時はビニールハウスの倒壊や、瓦屋根が飛ぶなどの被害が多発し、住家は約7万7千棟が一部損壊・半壊となり、農産物等の被害は670億円にも及びました(※1)。
令和元年房総半島台風で倒壊した、千葉県あゆみの会のビニールハウス
水没したあゆみの会の人参畑
台風は一般的に中心より東側の方が勢力が強く、上陸した東側の地域に甚大な被害をもたらすことが多いです。豊後水道(愛媛県と大分県の間)を通れば四国や広島県が、紀伊水道(和歌山県と徳島県の間)を通れば紀伊半島が大きな被害を受けます。
令和元年房総半島台風の停電で、復旧が遅れた信号機
台風発生の一報が入ると、農家はまず進路予想を確認し、最悪の想定に備えます。風の被害を大きく受ける可能性があれば、中の作物は犠牲にしてでも、倒壊を防ぐためにビニールハウスのビニールを全て剥ぐ事もあります。
中の作物がダメになってでも、ビニールを剥がないと倒壊することも
台風が救世主になることも
しかし「台風が全くこないのも困りもの」という場合もあります。今年の九州や四国など西日本エリアでは、この1ヵ月半ほとんど雨が降らず、猛暑・干ばつで果樹が衰弱したり、ハウス栽培のトマトの樹が枯れたりする被害が出ています。
熊本県のみかん生産者の右田さんは「連日38度の猛暑なのに雨が全く降らない。人為的に水を撒くか迷っている」と話します。
熊本の柑橘生産者、草枕グループの右田さん
干ばつの最中に安易に水撒きをすると、樹が「やっと雨が来た!」と勘違いし、それまで何とか耐えていた警戒モードを解いてしまいます。その後水が続かないと、かえって弱って枯れてしまうこともあり、悩ましい判断なのです。
干ばつで弱ってしまっている、右田さんの晩柑の樹
適度な台風がきて雨を降らせてくれると、猛暑も和らぎ樹が復活できます。そんな思い通りにはいかない台風ですが、今後も発生する際は適度な勢力で直撃しないコースを祈るばかりです。
※1) 出典∶内閣府災害事例「2019年(令和元年)令和元年度台風第15号」(内閣府)(2024年8月23日に利用)
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